1.ボーイスカウト運動の創始と発展
ボーイスカウト運動は、イギリスのロバート・ベーデン-パウエル卿(1857~1941年)によって始められました。
陸軍の将校であったベーデン-パウエル卿は退役後、長年勤務したインドやアフリカのきびしい自然環境での生活体験をもとに、青少年が立派な国民、社会人となるのに役立つ訓練計画を立案しました。
そして、1907年の夏、21人の少年たちとともにイギリス海峡にあるブラウンシー島で2週間の実験キャンプを行い、その結果をもとに1908年に「スカウティング・フォア・ボーイズ」という本を著しました。これは、イギリスの多くの少年たちに歓迎され、この本にもとづいて、各地でスカウトの隊や隊長といった組織が整えられていきました。
数年後には、ベーデン-パウエルが当初この運動の対象として考えていた年齢層より幼い少年を対象としたウルフ・カブ(現在のカブスカウト)、そして青年たちのためのローバースカウトが相次いで始められました。
この運動はやがて全世界に広まり、日本でも1910年代から各地で行われるようになりました。さらに1946年には、ボーイスカウトの年齢をこえた少年たちのためにシニアースカウト(現在のベンチャースカウト)が、1986年には、カブスカウトより幼い少年たちのためにビーバースカウトが始められました。
こうして、はじめ11才から15才の少年を対象にして始められたボーイスカウト運動は、6才の少年から青年にいたる一貫した教育システムとなり、ブラウンシー島のキャンプから100有余年たった今日、世界120か国1600万人の参加する国際的な組織となりました。4年に一度開催されるスカウトの祭典、世界ジャンボリーや日本ジャンボリーでも、世界中のスカウトたちが温かい交流を深めています。
2.ボーイスカウト運動の目的と方法
創始者ベーデン-パウエルは、スカウト運動の目的を「少年たちがよい社会人となり、幸福な人生をおくること」と端的に表現しています。
私たちは、1人でも多くの青少年がこの運動に参加することによって強健な身体、立派な品性、人生に役立つ技能、他の人々への奉仕の精神といったよい社会人としての資質を養い、幸福な人生をおくれるような、社会に役立つ力を身につけることを願っております。ボーイスカウト日本連盟はこの目的を達成するために、教育の目的及び基本方針を次のように規定しています。
目 的・・・・財団法人ボーイスカウト日本連盟は、ボーイスカウトの組織を通じ、青少年がその自発活動により、自らの健康を築き、社会に奉仕できる能力と人生に役立つ技能を体得し、かつ、誠実、勇気、自信及び国際愛と人道主義を把握し、実践できるように教育することをもって目的とする。(教育規定第1条)
基本方針・・・・ボーイスカウト運動は、 ちかい と おきて の実践を基盤とし、ベーデン-パウエルの提唱する班制教育と、各種の進歩制度と野外活動を、幼年期より青年期にわたる各年齢層に適応するように、ビーバースカウト、カブスカウト、ボーイスカウト、ベンチャースカウト及びローバースカウトに分け、成人指導者の協力によってそれぞれに即し、しかも一貫したプログラムに基づいて教育することを教育方針とする(教育規定第2条)
(1)年齢別のスカウト活動
スカウトの組織は、学年(年齢)によって次のように区分されており、これらを総称してボーイスカウト(広義の意味)といっています。
(2)ちかいとおきて
入隊に際し、スカウトは ちかい をたてます。スカウトの ちかい はスカウト運動の基本的な精神であり、スカウトのあるべき姿を示しており、自発的に”名誉にかけて”実行をちかうものです。
ちかい がスカウト自信の信条であり、この運動の基本であるのに対し、 おきて はスカウトの日常生活での行動を評価する”ものさし”であり、 ちかい とともにスカウト運動の基礎となり、あらゆる活動の底流となるものです。
ちかい と おきて は、いわばボーイスカウトの約束であり、ごく一般的な教育原則です。したがって校則などとはまったく違うものですし、強制的な教育をするものではありません。「いつも他の人々を助けます」というように、「・・・しなければならない」「・・・するな」というものではなく、「・・・する」という、自主性にまかせるものになっています。
● スカウトのちかい
私は、名誉にかけて、次の3条の実行をちかいます。
一、神(仏)と国とに誠を尽くし おきて を守ります。
一、いつも、他の人々を助けます。
一、からだを強くし、心をすこやかに、徳を養います。
● スカウトのおきて
1.スカウトは誠実である
2.スカウトは友情にあつい
3.スカウトは礼儀正しい
4.スカウトは親切である
5.スカウトは快活である
6.スカウトは質素である
7.スカウトは勇敢である
8.スカウトは感謝の心をもつ
(3)やくそくとさだめ(きまり)
カブスカウトやビーバースカウトは年少のため、その理解力を考慮して表現を平易にした やくそく をして、入隊します。また、カブ隊の さだめ や、ビーバー隊の きまり があります。
● カブスカウトのやくそく
ぼくは
まじめにしっかりやります
カブ隊の さだめ を守ります
● カブ隊のさだめ
1.カブスカウトは すなおであります
2.カブスカウトは 自分のことは自分でします
3.カブスカウトは たがいに助けあいます
4.カブスカウトは おさないものをいたわります
5.カブスカウトは すすんでよいことをします
● ビーバースカウトのやくそく
ぼくは
みんなとなかよくします
ビーバー隊の きまり をまもります
● ビーバー隊のきまり
1.ビーバースカウトは げんきにあそびます
2.ビーバースカウトは ものをたいせつにします
3.ビーバースカウトは よいことをします
(4)モットー(標語)とスローガン
・スカウトのモットー
”そなえよつねに”(Be Prepared)というスカウトのモットーは、また、創始者ベーデン-パウエルのイニシャルB.P.にちなんだものでもあります。同じモットーを、世界中のスカウトがそれぞれの国の言葉で掲げています。
それは、「さあこい、いつでも準備はできているぞ」という、物事に対処するスカウトの積極的な姿勢を示すものです。
・カブスカウトのモットー
”いつも元気” どんな権力よりも宝物よりも、健康は大切な宝です。健康な家庭は明るい雰囲気に包まれています。健康な人は、学問に、仕事に、あらゆる方面で活躍できます。人生をいつも積極的で活気に満ち、楽しい雰囲気で過ごせるようにという意味を示すものです。
・スカウトのスローガン
”日日の善行” (Daily Good Tern) 私たちは、毎日の生活の中で多くの人や、人のみならず動物、植物、その他諸々のもののお世話になっています。このスカウトのスローガンは、私たちがお世話になっているこれらのすべてに常に感謝し、少しでもよいお返しをしよう、というスカウトの心がけを示すものです。